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「これ、男の子のだよ?」
清海おばさんは切れ長い目にどこか冷たい光を宿した笑顔で半ば念を押す風に告げる。
「そうだけど」
自分はハルくんと同じ男の子ではないの?
皆が言うように女の子なの?
いつも胸の奥で口を開けている暗い穴がまた渦を巻き始める。
「こういう時は女の子の方が着物もお洋服もやっぱり華やかだから」
微かにそれと分かる程度に棘を含んだ声で語る母親の隣でハルくんは俯いて麦茶のグラスのストローを吸う。
おばさんは何故かいつも息子の性別を喜ばない言い方をする。
「このスーツのハルくんなんて見本のモデルみたいじゃない」
ママは今度は小麦色の丸い顔いっぱいにウキウキした笑いを浮かべてミニアルバムの新たに開いたページを指差した。
やっぱり笑うと清海おばさんよりうちのママの方が可愛い。
少なくとも清海おばさんのように普通に笑っているはずなのに怖いと感じることはない。
ハルくんも少しホッとした面持ちで母親二人とその間に広げられた自分の写真を見やっている。
そこにはセピア色の時計台じみた背景に白と黒のチェック模様のスーツにワインレッドの蝶ネクタイを結んだハルくんがどこか大人びた微笑を浮かべて立っていた。
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