第七章:君は優しいから――美生子八歳の視点

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 隣の陽希は何事か思案する面持ちで中高い横顔を見せて歩いていた。  自分より頭半分以上大きい、小学二年生にしてはかなり長身のこの子を横側から眺めると、背負った真っ黒なランドセルが早くも小さく見えてくる。  おれは好きな群青のランドセルを買ってもらったけれど、ハルは本当は黄色や緑が好きなはずなのに真っ黒なランドセルだ。  女の子はめいめい好きな色のランドセルを背負った子が多いけれど、男の子は黒のランドセルばっかりだから我慢して皆に合わせたのだろうか。  それとも、清海おばさんが黒でなければダメと言ったのかな。  ママやおばさんが子供の頃のランドセルは女の子は赤、男の子は黒でほとんど統一されていたそうだ。  今は自由に選べるようになったけれど、女の子と比べると、男の子は相変わらず黒のランドセルを背負わされる子が多い。  本当の男の子だとそんな縛りもあるのだ。
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