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「はい、目はしっかり前を見て」
先生の声に我に返ってから、いや、俺は目自体は前をしっかり見ているから大丈夫だとも思い直す。
あっ……!
思わず声にならない声が喉の奥で詰まる。
すぐ前に立つ美生子の白いタイツの片足には鮮やかな赤い線が一筋引かれていく所だった。
生理だ。
そう思った瞬間、美生子本人も異変に気付いたらしく棒立ちになる。
振り向いた円らな瞳とぶつかってこちらもまるで倣うように棒立ちになった。
相手の顔色は常の薄いピンクからたちまち紙のように白くなっていく。
「美生子さん、ちょっとこっちへ」
先生は「何でもないことですよ」という風に穏やかに微笑んで手招きする。
早足で俯いて教室の外に出ていく美生子と講師を前後する年配の少女たちはどこか恐れる風に、もっと年嵩の少女たちはどこか痛ましげに眺めていた。
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