第二章:七夕の二人――清海《きよみ》の視点

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 それからどのくらい時間が経っただろうか。  トイレの壁にもたれたまま、ぼんやりとこれからを考えていた。  明日の朝一番に役所に行って離婚届をもらってこよう、自分が記入できる分は書いて印を押してダイニングのテーブルにでも置いてこのマンションの部屋を出よう。  きっとあの人もあっさり印を押して役所に出してくれて、それでもう離婚成立だ。今だって彼の中では既に他人だろう。  明日は午前中にお金とカード、通帳と保険証の他は二、三日分の衣類だけボストンバッグに入れて新幹線で実家に帰ろう。  この部屋から私の荷物を引っ越す作業はその後おいおいやればいい。  大体家具なんて殆どはあの人のお金で買った物だし、今となっては執着するほどの物もないのだ。  自分一人が出ていけば大抵のことは済む話だ。  半年前に流産して体調が思わしくなくなってから仕事も辞めてしまったし、この街に居続ける必要などもうないのだと思い当たる。
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