第十三章:水の体、泥の心――美生子十三歳の視点

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***** 「そんなに何冊も買って。図書館で借りればいいじゃないの」  自分は飽くまでお正月に貰ったお年玉の残りと毎月のお小遣いを溜めて買ったのに、お母さんはいざ好きな物を買うと無駄遣いのように言う。 「図書館はいつか返さなきゃいけないし、読者感想文書くにはちゃんと手元にある本で内容確かめたいから」  返事を待たずに段ボール箱を持ち上げると、さすがにズシリと重い。  Amazonで買った紅楼夢の全巻。これは全百二十回、清代の中国を舞台に名家の息子として生まれた美少年の賈宝玉(かほうぎょく)と彼を巡る美少女たちの運命を描いた、日本で言えば源氏物語に匹敵する大長編だ。
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