第十三章:水の体、泥の心――美生子十三歳の視点

5/6
前へ
/319ページ
次へ
――ガラガラ。  不意に台所との仕切りのガラス戸の開く音がした。  台所に置いたジャガイモの土臭い匂いやネギの青臭い匂いと共に温い空気が入り込んでくる。 「西瓜(すいか)切ったよ」  母親は小麦色の丸い顔に顎を二重にして笑っている。  お母さんはまた少し肥ったようだ。 「ああ」  こちらの思いをよそに母親は扇形に切り揃えた赤い西瓜の並ぶ皿を運んできてテーブルに置く。 「昨日買ってきて冷蔵庫で冷やしたからおいしいよ」  今年もまた新たに買った向日葵柄のワンピース姿は横から見ると元から大きな胸やお尻はもちろん体全体の厚みがいっそうに増し、抜きでた腕はより太くなったと思う。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加