第十四章:雨の日に還《かえ》る――陽希十四歳

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「これでいいじゃねえかよ」  どうして読んだ時に感じてもいない内容を付け足す必要があるのだろうか。 「俺は文才がないんだ」  ミオは去年、紅楼夢の感想文でコンクールに入選した。  だが、自分はあんな注釈だらけの長たらしい古典シリーズを読み通すのも拷問ならば、原稿用紙五枚分の文章を綴るのも苦行としか思えない。 ――ミオちゃんは早生まれでも成績がいいのに、あんたは頭が悪いんだから。  実際のところ、自分は学校でも真ん中どころなのだが、お母さんは落ちこぼれのように貶す。  ハンスのお父さんは一応は息子の優秀さに期待してくれていたのに、俺のお母さんはひたすら否定しかしてこない。 「持って生まれたものが違うんだ」  書きかけの文章はそのまま保存して、新たなウィンドウを開く。
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