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次の日は、ひときわ寒い朝だった。
星のささやきはもちろん、ダイヤモンドダストが周囲を舞っていて、世界が私を祝福しているような、そんな美しい光景が広がっていた。
それなのに、私は気が重かった。昨日の学校でのやり取りをずっと引きずっていたからだ。
「朝比奈さん、私、今日用事あって。そこの掃除ささっと終わらせちゃうから、ごみ捨てだけ頼んでもいい?」
HR後の掃除で、同じ場所の担当になった雁谷さんからそう言われて、私は答えた。
「あ、うん。――でも、それでいいの?」
私は『急いでいるなら掃除も代われるけれど、ごみ捨てだけでいいの?』という意味で言ったつもりだった。けれど、彼女はなぜか気分を害したようで、いらだたし気にほうきを動かした。
「……悪かったわね。やればいいんでしょ、やれば」
雁谷さんはそう言っていつもより念入りに掃除をすると、私の手からごみ箱を奪い取って焼却所へ向かっていった。何が起こったのかわからず、呆然としていた私は、そこに至ってようやく、誤解されたのかもしれないことに気づいたのだ。
たぶん『掃除をそんな風に適当にしていいのか?』という意味に受け取られたのだろう。
(そんなつもりじゃなかったのに……)
その出来事から今朝までずっと、「あのとき、星のささやきが聞こえていたら」なんて、詮無いことを考えている。
私は、雪をきしませ踏み固めながら、もう何度目かのため息をついた。
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