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彼はどうも歴史的な建造物や自然が好きなようで、わざわざ一本早いバスで通学して、途中にあるこの公園で時間をつぶしているらしい。今からバスに乗って学校へ向かう私と、なぜここで出会うのか不思議だったけれど、それを聞いて納得した。
バスの時間が迫っていたので、彼とはそれで別れた。
外国人とちゃんと話したのも、あんなイケメンと二人きりの時間を過ごしたのも、初めての経験だ。この先彼と関わることは二度とないだろうし、貴重な思い出として大事にしよう。
そう思っていたら、数日後、公園内の小さな森のようになっている一角で彼を見つけた。両手を器の形にして目の高さに上げ、空を見上げている。
何をしてるんだろう。
つい好奇心に駆られた私は、気づかれないようそうっと近づいてみる。
『そろそろシジュウカラが下りてきてもよさそうだけど……』
「――シジュウカラ?」
思わずつぶやいてしまって、慌てて口をふさいだ。しかし、時すでに遅し。彼は両手を下ろし、こちらを振り向いた。
『あ、えーと……。コトハ、だったか?』
ここまできたら、知らないふりはできない。とりあえず、挨拶だけでもするべきだろう。
(えっと……、ラーシュさん、はおかしいよね。だとすると……)
「――は、ハイ! ラーフュ……っ!」
(か、噛んだ……!)
たった二言なのに撃沈した。あまりの恥ずかしさに、一瞬で顔が沸騰する。
ラーシュは数度瞬きすると、豪快に噴き出した。次々と生まれる白い綿からは、
『さすがコトハ』
『ハズさない』
『朝から絶好調』
と、私をほめたたえるズレた言葉の数々が音を立てて流れ出る。
違うから。
私、別にふざけてないから!
そう必死に弁解したけれど、彼は笑うのに忙しくて聞いていやしなかった。
(……でも、まあ、いっか)
思い切り笑われたおかげで緊張がほぐれた。怖い顔で睨まれるより、ずっといい。
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