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彼はひとしきり笑った後、樹上と私の顔を交互に見た。
『シジュウカラ、知ってるのか?』
「えっと、それって鳥だよね? もしかして……、アーユーギビングフードバード?(食べ物の鳥を与えているの?)」
『……鳥に餌をやっているのかって意味なら、そうだよ』
わたしのたどたどしい英語を、彼はなんとか聞き取って返答してくれた。不自然な咳払いを何度か挟んでから、続ける。
『あんたも、つまらなそうだと思うか?』
「まさか! じゃなくて、ノー! アイウォントゥーイット、トゥー!(私もやりたい)」
実際にやらせてくれるようねだったつもりはなかったけれど、彼は微笑んでヒマワリの種を分けてくれた。
『こうしてしばらく動かないで待っていて』
言われたとおりに種を両手に乗せて、身動き一つせずに待つ。
十分も経った頃だろうか。かすかな羽音がしたかと思うと、手のひらに一羽の小鳥がちょこんと乗った。
(う、わあっ……!)
黒い頭が目立つ薄水色のそれは、冬毛で膨らんだ丸っこい体を支えるため、か細い足でぎゅっと私の指をつかんだ。種をつついて何度かはじくと、一つだけくわえてさっと飛び去る。
「あっ……」
わずかな時間の邂逅だった。けれど、指と同じくらい強く、心臓もわしづかみにされた。
「か、かわいいっ! えーと、キュート、ベリーキュート!」
『コトハ。静かに。興奮しすぎだ』
そう言いながら、ラーシュも声を上げて笑った。
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