夏の終わりの悲劇

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 夏が終わる前故郷に帰省した。  最近仕事が忙しかったため、遅めの盆休みとなった。  久し振りに母さんと話して、手料理を食べ、風呂に入る。そして、部屋で缶ビールを飲みながら故郷に住む高校時代の親友と電話をした。 『久し振りだなー。帰って来るの遅くなるって言えば良かったのに』  「ごめんごめん」と、笑いながら謝る。すると、いきなり話を切り出した。 『頼みがあるから明日来てくんない?』  その頼み事が悲劇を知ることになるのを承知の上で「わかった」と返事をし、スマホの電源を切った。  その頼み事、何なんだろうと天井を見上げた…。 ーーーーー  翌日。  アパートで一人暮らしをしてると言う親友の家に着き、玄関のチャイムを押した。 「よく来たな。とりあえず上がれ」  言われるがまま「お邪魔します」と、中に入る。  嫌な予感がする、と固唾を飲み込んだ。 「これを見てくれ」  親友が差し出したのは一冊のノート。1ページずつ捲ると、新聞の記事が貼っていた。 「花火大会の日に起きた死亡事故知ってるか?」  親友が指を差したのは1人の女性が死亡と大きく書かれた一面の新聞の記事。  一体何故?と、聞いてみた。  返ってきたのは、驚愕とも言うべき一言だった。 「本当に事故に巻き込まれて亡くなったんだよ…」  親友はさらに話を進める。僕は麦茶を一口飲み、話を聞いた。 「夏の終わり頃に花火大会が開催されるのは覚えてるかだろうな?その後病院に搬送されたが死亡が確認された。事故の詳しい事情はまだ分かってないんだ」  故郷の花火大会は夏の終わりに開催する。 その帰りに事故に遭ったなら、飲酒か前方不注意かはたまた暴走車かと、辻褄が合う。 「で、今年も花火大会は?やるの?」  親友は呼吸を整え、こう言った。 「今年は開催中止だ。何でも死者が出るとかって噂が出てる」  何だよそれ…。これじゃただの呪いか都市伝説じゃないか…。 「残念だけど仕方ないさ。久し振りに会ったからどっか行こうぜ」  親友がいきなり車のキーを持ち、立ち上がる。「いいね、行こう!」と、立ち上がると何やら気配が感じた。  ──コトシモハナビアガルノ…?  気のせいだろうと、玄関で靴を履き親友の家を出ようとすると、また気配を感じた。  やはり当日事故で死んだ女性の声がした。呪い・もしくは都市伝説は実在し、花火大会開催中止の真相が明らかになった、と僕はそう思ったーー。 《完》
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