ひとつ屋根の下、殺し愛

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   * * *  ひんやりとした空気がリクヒトを襲う。ハッと目を覚ませば、そこには全裸のセツナがいた。なぜかリクヒトもはだかでいる。 「セツナ……?」 「良かった。気がついたのね」  ごめんね、予備電源が切れちゃったんだ、とセツナはヒーターを指さす。寒いと感じたわけだ。セツナは人の肌で暖をとろうと、はだかになったのだろう。けど、雨や雪に降られたわけではないのだからはだかになる必要はないような……それともこれはリクヒトの願望なのか?  小柄なセツナは雪を彷彿させる真っ白な肌を震わせている。ホテルではアップにしていた黒髪も肩までおろされ、鎖骨まで流れている。着やせするタイプなのか、想像していたよりも胸がおおきいのに驚く。蕾の色は桜色。無垢でありながら、アンバランスな体つきを前に、なんだか夢を見ているみたいだとリクヒトは毒づく。 「……ここ、は?」 「藍屑の隠れ家って呼ばれる山小屋よ。山の神ですら立ち入ることの許されない、妻神の生家」 「なんの、こと?」 「かわいそうなリクヒト。うっかり殺人鬼になったばっかりに……」  哀れみと同情が混じったセツナの眼差しに、これは悪い夢のつづきなのだと悟る。
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