ひとつ屋根の下、殺し愛

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 山の神が棲まうといわれる禁域に五人で行った際に、転んですこしだけ血を流した。その血が引き金になったのだろうか。だがセツナは禁域に立ち入る程度なら山の神が人食い熊の姿を借りて降りて来ることはないと言っていた。ほかに思いつくことは…… 「リクヒトが追われているのは、獲物を横取りしたからよ。あのふたりも、山の神に裁かれるはずだったの」  セツナは寝台のうえで硬直しているリクヒトの身体を撫でながら、容赦なく告げる。 「山の神はとても嫉妬深いの。禁域に立ち入るだけなら問題ない。けれどそれが夫婦や恋人同士だと……」 「それだけで、食い殺されるってのか……?」 「禁域で睦みあうアベックは格好の餌食よ。だから地元の人間はけして男女一緒に入ることはない」 「知っていて俺たちを送り出したのか?」 「だってまさか禁域まで行くとは思わなかったんだもの。トクノ草はどこにでも生えてるし」  すべては禁域に立ち入ったリクヒトたちが悪いと一蹴して、セツナは問いかける。
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