ひとつ屋根の下、殺し愛

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 異変に気づいたのはリクヒトの方だった。透明な液体がおねえちゃんからたらたらと垂れている。 「おねえちゃん? 具合悪いのに一緒に遊んでくれたの?」 「心配しないで、あたいのこれは一時的なものだから。雪女は暑いととけちゃうの」 「おねえちゃん、ゆきおんななの!?」  汗だくになっているセツナを心配していたリクヒトはそれが雪解け水だと言われて驚いている。雪女は一定時間高温の場所にいると身体から水分が溶け出してしまうのだ。清涼な藍屑山なら耐えられると思っていたが、この日の気温はセツナが予想していたものよりもはるかに高かったらしい。 「ホテルに戻れば涼める場所があるから大丈夫よ。それよりリクヒト。あたいが雪女なの怖くないの?」 「怖い? どうして? 怖くないよ?」  きっぱり言い切ってリクヒトはセツナに微笑みかける。 「だって僕。おねえちゃんみたいな綺麗で愛らしいひとなら、ゆきおんなでも構わないもの」  彼はそのときの記憶などとっくに忘れているだろう。  山の神は珍しくセツナが余所の子どもと遊んだことを咎めなかった。きっと食事にありつけて満足していたからだろう。
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