ひとつ屋根の下、殺し愛

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「それは仕方のないことよ。だけどお仲間さんたちのことは残念ね」 「……セツナは俺が怖くないのか?」 「怖い? どうして?」  きょとんとするセツナを前に、リクヒトは苦笑する。見た目は二十歳過ぎで自分より年下かと思っていたが、どうやら彼女は年上らしい。幼い頃、家族に連れられてきたリクヒトの姿を見たことがあると懐かしそうに口にしていたから。 「……リクヒト、あなたの方こそあたいが怖いと思わない?」  舌足らずな口調とは裏腹に、ふふっ、と妖艶に笑うセツナを見て、リクヒトは何も言えなくなる。  セツナはリクヒトのことをよく知っている。幼い頃のことから、ついさっき起きた出来事の真相まで。 「藍屑の禁域に入ったのはあなたを含めて五人だっけ。そのうちのふたりは翌朝、ホテルの客室で不審死。警察は一通り調べるだろうけど、事故か自殺で落ち着かせるでしょうね」  セツナが働いている藍屑スノウホテルでは、よくひとが死ぬのだという。
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