ひとつ屋根の下、殺し愛

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   * * 19XX年、夏 * *  三日前、リクヒトは学生時代の仲間四人とともに藍屑スノウリゾートを訪れた。藍屑山の麓に位置するスキー場からほど近い場所にあるスノウホテルは、比較的新しい建物でありながら料金設定が低い知る人ぞ知る宿泊施設でもある。  幼い頃、このホテルを両親とともに訪れたリクヒトは、隣室で宿泊中の老人が亡くなった現場を偶然にも目撃していた。持病の発作によるもので事件性はないとのことだったが、あのときにホテルの従業員や地元警察の人間が淡々と処理していた姿が忘れられずにいた。両親にきけば、「よくあること」らしく、それ以上の追及はできそうになかった。  あれから十年、藍屑周辺は人ならざるモノが蔓延っており、ときどきそれらが悪さをするのだと知った。テレビのバラエティでは霊媒師が除霊を試みても一時的に空気が清められるだけで、本質を変えられないなどといって都市伝説として藍屑を売り込んでいた。  噂を知って面白がるサークルの仲間と何度か訪れたが、特におかしなことは起こらなかった。どうやらそのときにセツナはリクヒトたちの顔を覚えたらしい。
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