ひとつ屋根の下、殺し愛

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 だが、リクヒトの当時の恋人は、藍屑を訪れてからすこしずつ気持ちを遠ざけていくようになった。体調も悪かったらしい。  ――もしあのとき。もっと俺が見ていれば、彼女は。  ぶん、と首を振って、リクヒトは現実に戻る。  ホテルは三部屋取った。サークル内で結婚した元彼女と親友、腐れ縁だと言い張る同級生の男女、そしてリクヒト。  藍屑山の禁域に足を踏み入れようと言い出したのは、誰だったか。  つい数日前のことなのにあたまの中に霧がかかったかのように思い出せない。  けれど、あの山の禁域に足を踏み入れた夜、リクヒトは結果的にひとを殺すという禁忌を犯してしまった。 「山菜取りでトクノ草を採ったか。薬草茶に入れる際に毒抜きしないで煎れたらしいなあ。地元の人間でも毒抜き忘れてしくじることがあるんじゃけ、仕方ねぇさ」  地元の刑事はつまらなそうに言い放つ。  死因は薬草茶に含まれていたトクノ草と呼ばれる毒草によるもの。嘔吐下痢からはじまり呼吸困難に陥り最悪死に至るという毒草は、藍屑周辺では古くから毒抜きをしたものが薬として流通していたのだという。
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