ひとつ屋根の下、殺し愛

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 いまも地元の人間は薬草茶として使うことがあるというその草を、リクヒトはリクエストしてきたセツナへの土産に摘んだ。当初は猛毒だと知りもせず。 「リクヒト、沸騰したお湯を使わないと毒が抜けないから、この薬草茶を飲むときは気をつけてね」 「沸騰していないお湯を使ったら?」 「やめときなさい、下痢するわよ」  至極当然という表情のセツナは、「これ、お仲間さんの分」と笑いながら同じものを手渡す。  スノウホテルの客室に無料で飲める薬草茶のティーバッグが提供されている。梱包されたものは事前に毒抜きをされているというが、地元の人間が用意した茶葉は、稀に毒が残っているのだという。  リクヒトは腐れ縁のふたりにセツナが作った薬草茶を「沸騰したお湯を使えよ」と注意しながら渡したが、夫婦には何も告げずに渡していた。ふたりでお腹を壊せばいいと思ったのだ。まさか死ぬとは思いもよらず。  殺すつもりはなかった。けれど、ふたりを死に至らせたのはリクヒトの行動が招いたのだ。
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