偏屈ばあさんのゴミ屋敷

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「っっあ゛ーーーーーーーーーーっっっ!!!!」  オレは、家中のゴミ箱を見て回る。ふたを開ける、中を覗く、ひっくり返す。ほとんどゴミが入ってない、ない、ない、ない。 「何、何、どうしたの(れん)、朝から。あーもう、ちゃんと片づけてよ」 「母ちゃん! ゴミ! ゴミは!?」 「ゴミ? 昨日の夜集めて玄関に置いて……。お父さん、持って行ってくれたと思うけど」  オレは玄関にダッシュした。……ない! 父ちゃん、何いい仕事してんだよ! 「オレ、ゴミ捨て場見てくる!」  サンダルを履きかけた。 「待ちなさい! そんなことしてたら学校遅れる! 準備して、学校行く途中で見ればいいでしょ? っていうか、どうしたのよ。何探してるの? 宿題でも捨てちゃった?」 「……歯!」 「は?」 「歯ーーーーー!!!! 昨日、学校で抜けて、ティッシュにくるんでポケットに入れたんだ。それでそのあと鼻かんだティッシュとかも突っ込んでて、昨日お風呂入る前に一緒に捨てちゃった!」 「あぁーら。そうだったの。それもう見つけるの……」 「とりあえず探す! コンプリートするもん!」  オレは超高速マッハで朝ごはんを食べて、ミラクルスーパー高速歯磨きをして、ハイパーウルトラ爆速着替えをした。  だって、だって、悔しいだろ? 子どもの歯が初めて年長で抜けて、そっからもう8本も揃えたのに、1本無いなんて! 乳歯ケースに1本だけ穴が空いたままなんて! 父ちゃんが、「乳歯ほかんケースに全部揃ったら、成長を記念して、コンプリート記念品をぞうていする」って約束してくれてるんだ! ぜったいにゲットするって決めてるんだ!  ランドセルに水筒をぶち込んで黄色帽を被った。 「あんた、青に青だけどいいの……? ちょっと変ていうか……」  母ちゃんがオレの服装を心配してるけど、いい。そんなことよりも早く歯を見つけないと! 「行ってきます!」 「行ってらっしゃい! 車に気を付けなさいよ!」  オレは靴のビリビリを外さないままグイグイ足を突っ込んで玄関を飛び出ると、爆速ダッシュした。
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