偏屈ばあさんのゴミ屋敷

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 「四年前、おとーさんが死んでしもうて、にこにこ歯科医院も閉めてしもて。まーっくらになってなぁ。娘が、しょぼくれたわしを気遣こうて、お骨の中の歯を、何やらいうて加工してもろて、かいらしいペンダントにしてくれたんや。おとーさんは死ぬまで歯医者さんやったからな。歯がええやろいうて」  あぁ。おとーさんって、父ちゃんのことじゃなくて、旦那さんってことか。 「おこつって何?」 「ふん。ガキ、お骨も知らんのんかい。死んだ人の骨っちゅことや」 「へぇー」 「それをうまいこと加工して、綺麗な飾りに作り変えてくれるんやて。そうすれば、残されたもんは、ずっと一緒でいられるいうて」  ふぅーん、そんなこと出来るんだ。知らなかった。娘もいたのか。偏屈ばあさんにはてっきり、誰も家族はいないんだと思ってた。 「しゃけど、それを失くしてしもうて。家の中はこの通りで探しきらんで。誰かが出したゴミの中に、紛れて入ってへんかと思うねけどな。ほんでも、探すんが大変じゃし。いつの間にかこんなゴミ山で、探す気にもなれんで」 「どこで失くしたの?」 「……さぁ、仏壇に置いといたはずじゃけど」 「それじゃぁ、ぜったい家の中にあるじゃん!」 「ふん……」 「今度は、ばあちゃんの大切な歯、探そうよ」  オレは、口をにーっとしてみせた。  二羽のすずめはまだ、ばあちゃんの庭でくちばしをツンツンしていた。
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