上位存在さんはご機嫌斜め

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上位存在さんはご機嫌斜め

…お前、ここで何しているんだ。 この時間は私の部屋にいるはずだろう。 …おい、逃げるなよ。 少しでも動けば、お前の身体をバラバラにしてやる。 そのあと肉片になったお前を再生させてやるが、その時は手足の再生はしない。 手足の無いダルマの状態で、私の部屋に永遠に閉じ込めてやるつもりだ。 私にそれをできるだけの力があることは、ようく知っているだろう? …ふん、分かっているじゃないか。 いつもそれだけ素直なら、もっと可愛がってやるというのに。 …それで、なぜ私の許可なく部屋から出ているんだ? 私が家にいないときは、部屋でじっとしてろって言っただろう。 ………ふぅん? 「外の空気が吸いたかった」? ……そうか。 じゃあ今すぐ吸うといい。 ほら、外の新鮮な空気だぞ。 思い切り深呼吸してみろよ。 …どうした、やらないのか? 空気が吸いたくて外に出たんだろう? やれよ、私が見てやるから。 ほら、早く! はやく!! は・や・く!!! ………はぁ…まったく……。 そんなに震えて怯えるくらいなら、最初から誤魔化さなければいいものを… 本当に、馬鹿な奴だよお前は。 私をそんな嘘で騙せるはずがないだろう。 わざわざ私がいない時間を見計らって出てきたんだ。 私から逃げたくてしょうがなかったんだろ。 お前は私のモノだというのに… いい加減、眷属としての自覚を持てよ。 ……おい、どうした? 顔を下に向けて、私の顔がそんなに嫌か? こっちを向け。 私が話してるんだ。 …なんで目を合わせないんだよ。 こっちを見ろって言ってるだろ!!! (強く殴る音) …ああもうイラつくなぁ! 殴ったくらいでピィピィ喚くな! お前が悪いんだろうが! 言うことを聞かないお前が悪いんだ! お前は私の所有物なんだから、これくらい黙って受け入れろ! このグズが!!! (一発目よりも強い殴打) ……チッ、2回殴ってやっと静かになったか。 手間かけさせやがって…… 次イラつかせたら、肉片だからな。 分かったらとっとと戻るぞ。 部屋でお仕置きだ。 (監禁部屋に移動) ……ふん、ほんの一瞬だったな。 これで分かっただろう? 私は全知全能だ。 お前から見れば圧倒的に上位種なんだ。 お前がどれだけ遠くに逃げたとしても、私はお前の元に一瞬で移動できるし、一瞬で家に連れ戻すことができる。 この星のどこにいようが、お前は私から逃れることはできないんだ。 お前は永遠に、私のモノだ。 自死を図っても無駄だ。 死ぬ前に必ず止めるし、お前が自死に成功したとしても、私が完璧に復活させる。 仮にお前の細胞全てがこの世界から消滅したとしても、私はお前を再生させることができるからな。 老化を止めることはもっと簡単だ。 私の力にかかれば、若いの肉体のお前と、永遠に愛し合うことだってできる。 …私に目をつけられた時点で、お前に逃げ場など無いんだ。 分かったら大人しくしていろ。 これからたっぷり愛してやるから。 ーーーーーー (一週間後) はあ…はぁ…はぁ… あぁ……綺麗だよ……愛しいよ……私の眷属。 (キスをする音) ………ふふふ、無限に体力を回復できるから、つい時間を忘れて繋がってしまうね。 結局一週間、全く寝ずに交わってしまったよ。 お仕置きのつもりが、ただ快楽を貪るだけになってしまうのが私の悪い癖だ。 まあ、それもお前のせいなんだけど。 …うん、なんでかって? そりゃあ、何度見ても飽きないからだよ。 その怯えた顔。 絶望に染まった瞳。 美しいよ……とても美しい。 お前は私の運命だ。 私の全てだ。 ……初めてお前を見た時、私はこの星を抹消しようとしていた。 いやなに、ほんの戯れさ。 あまりに強すぎる力を持ちすぎると、星の1つや2つ、遊びで壊すのが当たり前になってくるんだよ。 今まで数えきれないくらい星を壊してきたから、手頃な生命が生息している星を探していてね。 ほら、ただの岩やガスの塊なんかを壊しても、流石に飽きてくるだろう? せっかく壊すなら、下等な生き物どもがどんな顔をして死んでいくのかを観察したほうが楽しいじゃないか。 あはは。 …そんな恐ろしいものを見る顔をするなよ。 こっちだって長い間、死ぬほど退屈だったんだ。 全知全能とはいえ、自分で死ぬことすらできない。 なんでもできるがゆえに、なにも変化が無い。 いくら星を壊しても、それを一緒にゲラゲラ笑う相手すらいないんだ。 地獄のような退屈。 それが永遠に続くんだぞ。 ちょっと気晴らしに星や生き物を壊すくらい、別にいいじゃないか。 私はそういったことを簡単にできるだけの力があるんだし。 …はあ。 …私はずっと、絶望していたんだ。 永遠に続く孤独に。 そんな時に見つけたのが、お前だった。 初めてお前を見た時、私はお前を手に入れるためにこの世界に生まれ落ちたと確信した。 一目見た瞬間、お前の命の輝きに魅入られてしまったんだ。 ああ、なんて素晴らしいんだろうって。 こんな愛しい存在を殺せるわけがない! そう思ったよ。 だってそうだろ? こんなにも美しくて、脆くて、哀れな生物なんて他にいないよ。 お前という存在は、神の如き私ですら想像できなかった奇跡そのものなんだ。 お前という最後のピースを手に入れることで、私の欠けた心は永遠に満たされるんだ。 …うん? 「俺はただの人間だ。そんな特別なものじゃない」だって? ……あはははは! そうだな、お前はただの人間だ。 上位種である私の前では、本来同じ地表に立つことすらおこがましい存在だ。 それは間違いない。 …でも、そんなことどうでもいいんだ。 お前は私にとって、完璧なんだから。 私はお前に会うまで、勘違いしていたんだよ。 数や種類が多い生き物は、矮小でなんの価値も無いゴミだって思っていたんだ。 だってそうだろ? 神のような私はたった1つしか存在しない。 その反対に虚弱なお前たち人類は、うんざりするほどの数が生まれてくる。 多いことは悪いことだって思っていたんだよ。 でも、違ったんだ。 お前たちの数の多さが、お前という奇跡を生み出したんだ。 …どこまでいっても偶然なんだろうな。 お前が生まれたのは。 お前は私にとって、あまりに適合しているんだ。 その顔、その瞳、その肌の質感、その命の温かみ、そしてその身体。 お前を構成する、ありとあらゆる全てが私と混じり合うために存在するような気がするほど、お前は私にぴったりなんだ。 まるで、お互いがお互いのために作られた鍵と鍵穴のように、私達の命は初めからひとつだったように感じるんだ。 これは、お前たち人類の数が多いことが生み出した奇跡だ。 恐ろしいほどの偶然の積み重ねの末にお前が生まれ、私と出逢った。 …こんな矮小な種族から私の運命が生まれてくるなんて、私にも驚きだよ。 ふふふ。 本当に、お前は私を楽しませてくれる。 …ああ、本当に愛しいよ。 私の運命。 私の愛しい人。 お前が劣等種であろうと、もはや何も関係ない。 種族の違いなど、些細な問題だ。 私がお前を永久に生かし続けるんだから。 もう、絶対に離さない。 お前は私だけのものだ。 私もお前だけのものだ。 私はお前を愛してる。 今回お前が逃げようとしたことで、私も反省したんだ。 お前を力で閉じ込めるだけではなく、私もお前に愛される努力をしなければならないとね。 なにより、お前が私の元から離れようとするのを見るのは………この身が焼かれるほどに苦しい。 だから、お前が望むことはなんでも叶えよう。 だから、お前も私を愛せ。 そうすれば、きっと永遠の幸せが待っている。 ……ふふ、そうか。 とても嬉しいよ。 例え今は嘘の言葉だとしても、お前がお前なりに私を理解し、私を愛そうとしてくれているのは嬉しい。 大丈夫、分かってるよ。 お前は嘘つきだけど、そういうところはとても正直だ。 その正直な心には、ちゃんとお礼をしないとね。 これからたっぷり可愛がってあげるよ。 本当の愛を育んでいこう。 なに、私達には時間がたっぷりあるんだ。 焦る必要はない。 この宇宙が終わるその時まで、永遠に二人きりで愛し合っていこうじゃないか。 愛してるよ、私の運命…
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