晩夏の花火

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外は夕陽がほとんど沈みかけており、オレンジと紫が混じったような幻想的な空の色に変わっていた。 ヒグラシも鳴くのをやめ、静かな風が吹いている。 近くの河原に行き、花火に火をつけた。 パチパチと弾けるような音を出しながら燃える花火を見て、舞香は微笑まずにはいられなかった。 嬉しそうにする舞香を見て、拓海は次々と花火に火をつける。 「ちょっと!そんな一気にしたら勿体無いじゃん!」 「いいんだよ、いっぱいあるんだから」 すっかり笑顔を取り戻した舞香の横で、拓海が呟いた。 「俺にもうつしてよ」 「何を?」 「年に一回花火見ないと死ぬやつ」 「えー?どうやって?」 と舞香が冗談ぽく笑うと、 拓海が舞香にキスをした。 驚く舞香に拓海が微笑み 「毎年一緒に見ような」 と言うと、 「バカ!!」 と舞香が叫ぶ。 2人の傍でリーンとスズムシの鳴く声がした。
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