晩夏の花火

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そうして日が過ぎ、夕暮れにヒグラシが鳴き始めた頃、バイトから疲れて帰った舞香は自室のベッドに横たわっていた。 すると、階下から母親の声が聞こえた。 「あら!どうしたの?」 誰か客人が来たようだ。何か話しているような声が聞こえたが、相手の声までは2階に届かない。 「舞香〜、拓海くんがいらしたわよ〜」 「えっ!!」 その声にガバッと勢いよく起き上がる。 (拓海?!なんで?!) タッタッタッと階段を登ってくる音がする。 (ちょっと待って、え、待って。バイト終わってそのままだし化粧もグチャグチャだし。え、どうしよう!) ノックの音の後、母親がドアを開けた。 「舞香、拓海くん。いらしたわよ」 そう言った母親の後ろに、スーツ姿の拓海が立っている。 「すみません」と母親にペコリと頭を下げた後、拓海が部屋に入ってきた。 家庭教師と生徒の関係だったが、大学に入ってからはこの部屋に拓海が来ることはなかった。 突然の出来事に舞香が咄嗟に顔を隠す。 「舞香」 声をかけられても顔を両手で覆っている。 「なんで顔隠してんだよ」 「だ、だって。化粧とかちゃんとできてないし」 「何言ってんだよ」 と拓海が膝をつくと舞香の手を握り、その間から顔を覗く。 「かわいい顔してるくせに」 「なっ!」 握られた手の間から見える舞香の顔が一気に赤くなった。
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