晩夏の花火

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「なに言ってんの!バカじゃないの!」 舞香はジタバタと手を払おうとしたが、力で勝てるわけもなく。拓海は優しく舞香の手を握り直し、顔から手をどけた。恥ずかしさでいっぱいの顔をあらわにされ、舞香は口を尖らせている。 「舞香、ごめんな」 スーツ姿の拓海を見るのは初めてで、さらにこんな風に面と向かってかわいいだとかごめんだとか言われたことはなかった。 「なんなのよー!もう〜!バカ!」 恥ずかしくなるとバカと言ってしまうらしい。舞香はその時自分で気づいたが、拓海はもっと前から気づいているようで嬉しそうに微笑んだ。 「花火、一緒に見に行けなくてごめん」 そう言って頭を下げる。 スーツ姿のまま頭を下げられると、土下座でもしているように見えてしまう。スーツって…なんかずるい。 「舞香が言ってたみたいに、前日インターンの先輩の飲み会に誘われて、付き合いで飲まされたらそのまま潰れてしまいました」 拓海は頭を下げたまま話した。 「ほんっとうに申し訳ないと思ってる」 「…嘘つき」 ボソッと呟いた舞香の方を見ると、ベッドの上で三角座りをして顔を半分埋めている。
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