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「ここから出て行け」
そう話すと、講師は腰を曲げて子供の顔を覗き込む。その表情には嫌悪が浮かび、子供相手に甘い顔をする性格ではないことが窺えた。
「何だよ、たかだかボランティアの」
「そうだ、利益の得られないボランティアだ。だから、報酬に見合った対価を与える義理はない」
講師は、子供の前にある机に両手を乗せた。この為、講師と子供の顔の距離は一層近くなる。
「もう、二度と来ねーよ!」
そう吐き捨て、子供はゲーム機を握りしめて部屋から去った。一方、ボランティア講師は部屋の前方に戻り、笑顔を浮かべながら他の子供達に向き直る。
「よし、じゃあ授業を始めるぞ。今日のお題は、不思議なドリンク作りだ」
その落差に、部屋に居る子供達は拍子抜けした。一方、ボランティア講師は、講師用に用意された机にクーラーボックスを乗せる。
「酸性とアルカリ性、理科の授業でもう習ったか?」
頷く子供も居れば、首を横に振る子供も居る。
「まあ、テストに出す訳じゃないから、気軽に授業を受けてくれ」
講師は、クーラーボックスの中から、紫色の液体が入った容器を取り出した。そして、それを眼前の机に置くと、白い粉の入った容器も二種類取り出す。また、何処からか、プラスチックのコップも出して机に乗せた。
「この紫色の液体に、それぞれの粉を加える。だが、加える前に舐めてみる勇気あるヤツは手を上げろ」
その授業のやり方に、戸惑い出す子供も居た。とは言え、全く手が上がらない訳では無かった。
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