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「一人の手が上がったな」
講師は薬包紙に折り目を付け、白い粉の一方をそれに乗せた。それから、薬包紙の端を器用に掴み、手を上げた子供の前に置く。すると、手を上げた子供は、その粉を口に含んだ。
「どうだ?」
白い粉の味を知った子供は、口元を押さえながら言う。
「酸っぱい」
「そうだ、この粉はクエン酸。つまり、酸っぱい性質の酸性だ」
講師は、クーラーボックスから冷えたペットボトルを取り出し、粉の感想を話した子供に渡した。
「これは、応えてくれたお礼だ。あ、別の味が良ければ言ってくれ」
ペットボトルを渡された子供は、パッケージを確認した。それから、蓋を開けて飲むことで、味に文句は無いことを伝える。この為、講師は部屋の前方に戻った。
「まあ、ここまで来れば、察しの良いヤツは分かるな? もう一つの粉は苦いアルカリ性の粉だ。中華系の麺に含まれているから、こちらも腹に入れて問題ない」
そこまで説明したところで、講師は先程とは別の粉を折り目を付けた薬包紙に乗せた。
「ここからは、よーく見ておけよ?」
講師は、紫色の液体に白い粉を入れた。すると、粉が溶けるにつれて、液体の色は青に近付いていく。
「リトマス試験紙と同じ変化だな。つまり、こっちの酸っぱい粉を入れて行けば……」
講師は、白い粉を少しずつ青くなった液体に入れた。すると、液体は紫色に戻り、それから徐々に赤くなっていく。
「と、まあこんな感じだ。この液体はあまーいシロップも使われている。そこでだ」
講師は、クーラーボックスから炭酸水を取り出した。
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