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「で、これが飽和水溶液ってヤツだな。水温が下がれば溶けきらない砂糖は結晶化するし、今の水温で砂糖を溶かそうとしても」
講師は透明な水溶液に砂糖を追加し、ガラス棒でかき混ぜた。しかし、何度混ぜても砂糖は溶けなかった。
「溶けないな。で、これを少しずつ温めてやる」
講師は、三脚にそっとビーカーを乗せる。
「学校では、真面目に水温を測りながらやるだろうが、それだと落ち着いてやれないし、水温によってどれだけ溶けるかは、教科書に表がある。だから、今回はただ楽しめ」
講師は笑顔を浮かべ、砂糖が溶けきっては新たな砂糖を追加していった。その合間に、講師はステンレス製のバットに乗せたリンゴと、カラフルなコーティングのなされたチョコをそれぞれ机に置いた。
「縁日にリンゴ飴ってあるだろ? あれは、要はチョコバナナのチョコが砂糖に、バナナがリンゴになったみたいなヤツだ」
講師は、リンゴに箸を刺していく。
「だけど、砂糖のコーティングだけじゃつまらないよな?」
講師は、深めのバットを机に乗せ、そこにコーティングされたチョコをあけた。それから、そのバットを零れない程度に斜めにして、カラフルなチョコを子供達に見せる。
「だから、砂糖が固まる前にこれを付ける」
それを伝えた後、子供達の目は輝いた。そうして、水溶液がリンゴ飴を作るのに適した状態になった頃、講師はリンゴに砂糖を溶かした液体を掛けてはコーティングチョコを貼り付け、材料が尽きるまでそれを繰り返した。全てのコーティングチョコがリンゴに貼り付けられた訳では無いが、それでも子供達はその見た目に興奮している。
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