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放置子の夏休みはサバイバルである
夏休みを前にした教室で、生徒達は浮き足立っていた。中には、計画的に私物を持ち帰らなかった為に、机の上に荷物が山積みになっている子供も居る。それでも、殆どの子供達は、明日から始まる夏休みを楽しみにしていた。
「明日からは夏休みだな。楽しみなのは分かるが、学校が無いからって何時までも寝てちゃ駄目だぞ?」
何人かの生徒が元気良く返事をし、担任は和やかに笑う。
「そうそう、おうちの人に通知表を渡すのも忘れるなよ? どんなに成績が悪くたって、怒られることはあるかも知れないが……それも、今しか出来ない経験だ。それに、学校の成績が全てじゃない」
間延びした生徒の声が教室に響き、中には早く帰りたそうに小刻みに揺れる子供も居る。
「面倒でも、出された宿題はやること。決められた日までにやるべきことをやるのは、ちゃんとした大人になる為の練習だ。今のお前達に言ってもピンと来ないかも知れないが、何時か分かる時が来る」
担任は柔らかな笑顔を浮かべて教え子を見た。この時、彼の担当するクラスの生徒の反応は、様々だった。
素直に返事をする真面目な子供も居れば、何となく返事を返す子供も居た。また、既に飽きて手遊びをする子供も居れば、話を理解出来ていない様子の子供も居る。担任は、子供達のどの反応も順次に把握し、教卓の上部で手を叩いた。
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