放置子の夏休みはサバイバルである

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「さようなら、先生」  少年は荷物を掴むと駆け足で教室を去った。担任は走り去る少年に手を伸ばすが、数秒間そうした後で手を引っ込めた。  担任は、教室に生徒の忘れ物が無いかを見て回った。夏休みに入ってしまえば、防犯面から教室は閉じられる。この為、担任は机の中を一つ一つ確かめながら教室を回った。  その中には、大掃除をしたにも関わらず、引き出しの奥にちょっとしたゴミや潰されたプリントが残されていた。担任は、このままでは腐るものは集めておき、プリント類は伸ばして該当生徒の机上に置いた。  担任は、最後まで残っいた生徒の机を覗くと、残念そうに顔を曇らせる。 (忘れ物が有ったら、それを理由に出来たんだけどな)  結果的に、どの生徒の忘れ物も届ける程の物では無かった。この為、担任は腐る残り物だけを手にして職員室のゴミ箱に捨てた。この時の担任の表情は暗かった。それは、生徒が見てしまえば、恐怖する程に暗かった。しかし、それも短い間のことで、他の教師が近くに来る前には、喜怒哀楽のどれでもない表情に切り替えていた。  その後、担任はその日の内にすべき仕事をこなし帰宅する。彼は、帰宅前に担任であれば確認出来る少年の住所を、改めて確認しておいた。まるで、これから起こることを予知しているかの様に。
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