9人が本棚に入れています
本棚に追加
そうしている内に救急車は到着し、少年は病院に運び込まれた。通報者が通り掛かっただけの他人であった為、病院側は少年の所持品から身元を判断しようと試みる。
少年の所持品は、入学当時から使っている水泳セットだけだった。しかし、それにはクラスや名前が記載され、倒れた場所から少年の通う学校が推測された。
当初、病院側は「子供が帰らないと心配した保護者が、学校に連絡を入れるだろう」と考えた。この為、病院側は救急車が向かった地点から推測した学校に、少年の名前やクラスと共に報告をする。すると、偶然にも学校には該当クラスの担任が居り、そこから「少年を見ようとする者」は動き出す。
連絡を受けた担任は、他の出勤してきている教師達に電話の内容を説明した。それから、保護者の連絡先一覧を取り出し、職員室の固定電話から電話を掛ける。話を聞いた他の教師達も心配そうに見守り、呼び出し音が夏休み中の職員室に響いた。しかし、どれだけ待っても応答は無く、担任は諦めた様子で簡潔にメッセージを吹き込んだ。
「仕事途中で申し訳ないですが、生徒が運ばれた病院に向かいます」
担任が他の教師に伝えると、誰も彼を責めはしなかった。誰もが自主的に抜ける同僚の仕事を分担して請負い、病院に搬送された生徒の無事を祈った。
最初のコメントを投稿しよう!