罪に応じた裁きはなんぞや?

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 断罪人の準備が済むと、部屋で待機していたもう一人の人物によって動画撮影は開始された。動画撮影をする人物は、撮影された場面とそれに対するコメントを確認しながら、断罪人へジェスチャーを介してその内容を簡単に伝えた。 「断罪チャンネルにようこそ。今宵の罪人は、自らの子を放置し、死なせかけた男だ」  断罪人は、椅子に拘束された罪人に右手を向けた。その手には、水分を通さず軽い打撃ならば吸収する素材で作られたグローブがはめられている。また、そのグローブと服の隙間から覗く皮膚は、透き通る様に白かった。 「この国の人間には、複数の義務が課せられている。先ずは、勤労の義務に納税の義務。そして、課せられるかどうかを、自ら選ぶことの出来る義務……それが、子供に教育を受けさせる義務だ。子供持たない選択をしさえすれば、それが課されることもない」  断罪人の前口上が流れている間に、視聴者は少しずつ増えていった。また、寄せられるコメントは、テンプレートを用いたものが殆どだった。 「それらの義務を放棄し、快楽にふける。自らの意思でなした子供の世話をせず、その責任を果たさない。その様な罪人がこの世から消えたとて、何ら不都合も無かろう?」  この時、動画視聴者からは、断罪人の意見に同意するコメントが寄せられ始めた。そして、それを見た動画撮影者が、それを予め決めたサインで断罪人に伝える。 「今、この男が作った子供は、炎天下の中で意識を失い、入院中だ。そして、この男に治療費を払う意思は感じられぬし、見舞いにくることさえする様子が無かった。故に、これから子供の味わった苦痛を与える」  視聴者数は次第に増え、コメントもそれに比例して増えた。また、少額ながら投げ銭コメントも生じ始める。 「子供が味わった餓えを与えるのは、容易ではない。代わりに、子供が味わった痛みを先ずは与えよう」  断罪人は、熱されたアイロンを、画面に良く映る位置に差し出した。そのアイロンは充電式で、コードに動きを制限されることはない。 「公道で倒れた子供は、体の様々な部分に火傷をおっていた。先ずは、それから始めよう」  その宣言通り、断罪人は罪人の皮膚を次々に焼いていった。その度に罪人からは低い声が漏れ、動画視聴者はコメントも忘れてその様子に見入っている。  一通り罪人に火傷を負わせた後で、断罪人はアイロンを画面から外した。そうしてから、画面越しに視聴者へ話し掛ける。
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