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「さて、次は何をすべきか、配信を観ている紳士淑女に問おう。子供の声を聞かぬ耳、その耳介を削ぎ落とし、鼓膜を焼いてしまおうか? それとも、食料を与えられ無かった子供の苦痛を味あわせる為に、歯を抜いて咀嚼出来ぬ様にしてしまおうか? 勿論、今回もアンケート結果によって、その断罪内容は変わる」
断罪人は何の躊躇いもなく言葉を紡ぎ、課金によるコメントが増えていった。
「成る程、この罪人には、複数の痛みを味あわせる方が、紳士淑女の皆様はお好みの様だ」
断罪人は面を被っているが、その口角が上がったことは、その周囲の皮膚の動きで判別出来た。また、動画撮影をしている者は、複雑な手の動きで断罪人に動画に寄せられたコメントについて伝え続けた。
「宜しい。次の断罪チャンネルの内容は、アンケート結果を元に構成しよう。罪を裁くにも、準備が必要だ。何より、その期間でこの罪人に餓えの苦しみを味合わせることが出来る」
動画に対する有料コメントの件数は減っていくが、コメントの数自体は増えていった。そして、それもまた動画撮影者から断罪人へと手の動きで伝えられた。
「それでは、画面越しにまたお会い出来る日を待っています」
断罪人は、カメラのレンズに向けて深々と頭を下げた。その数秒後に動画の撮影は終わり、配信データは定型のチャンネル登録を促す画面に切り替わった。
動画の配信が終わった後で、断罪人は撮影者の方に近付いていった。それから、彼は撮影中に寄せられたコメントを、一つ一つ確認し始める。
その間、動画撮影に用いられた道具は放置されたままで、罪人が解放されることは無かった。また、撮影用のカメラには、間違って録画がなされないよう、黒い布が被せられる。
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