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「まずまずの収益と言うところか」
断罪人は、面を外すこと無く言い、小さく息を吐いた。一方、これまで無言で撮影をしていた者が、初めて口を開く。
「で、女の方はどうするの? 何の説明もなしに片っぽだけ断罪しても、炎上するだけ」
それに対して、断罪人は答える。
「この罪人と違って、常に他者に貼り付いて生きる罪人だからな。今は、釣り餌を垂らしてかの罪人が掛かるのを待っている状態だ」
断罪人は、タブレットを操作して次のターゲットとなる罪人のSNSを表示した。そのプロフィール画面には、「様々な加工がなされた女性の顔のアップ写真」が大量に並んでいる。
「うわっ、加工し過ぎて化け物じゃん!」
その反応に断罪人は笑った。
「顔に出てしまう内面の醜さを、外見を加工して綺麗に見せようとしても、所詮それは紛い物。その加工品に群がる者達は、紛い物は利用しやすいことを知っている」
「だけど、加工品自体は、自分の魅力でモテていると勘違いしているって?」
「そういうことだ。そして、加工品に群がる者が後を絶たぬ為、或いは罪人が一度捕らえた相手を直ぐには離さない為、容易に手を出せない。だが、かの加工品に群がる者達が途切れ、こちらの差し出した餌に食い付いた時」
「一気に罪人を釣り上げて、視聴数も収益も爆上げ!」
それに対して、断罪人は頷いた。
「そういうことだ。この罪人を飢えさせるのも、最もらしい理由を付けておきながら時間稼ぎにもなる。急いては事をし損じる。何事も、準備を万端にせねば、綻びが生じるからな」
断罪人は、タブレットに表示された画面を切り替え、やり取りしているメッセージを撮影者に見せた。それを見せられた撮影者はメッセージの一つ一つに目を通していく。
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