ある日の放課後

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ある日の放課後

「あ、そうだ。日直の男子は、この後一緒に来てくれ」  担任が笑顔を浮かべて帰りの挨拶をすると、生徒達は元気に挨拶を返した。それから、生徒達はそれぞれに固まりながら教室を去る。  他の生徒が帰宅した後、担任は一人残った生徒に歩み寄った。 「じゃあ、ちょっと手伝って貰おうか」  担任は荷物を持って付いてくるよう少年に伝え、廊下を共に歩いた。担任は、すれ違う生徒と軽い挨拶をしながら、教室としては使われていない部屋に少年を案内する。 「帰り際に、下駄箱の前にある掲示板にこれを貼ってきてくれ」  少年は頷き、ポスターを受け取った。その後、担任は部屋のドアを開け、生徒用の玄関に向かう少年を見送った後で職員室へ急いだ。  担任から渡されたポスターを貼る為、少年は掲示板の前に立った。その掲示板は小学生でも扱い易く、画鋲の針で怪我をしない様、押しつけさえすれば掲示物を貼れる仕様のものだった。この為、少年はポスターを開き、平らにしながら掲示板に貼り付けていく。  少年が貼ったポスターには、近くの教会で開かれる「子供食堂」について書かれていた。食堂が開かれる曜日や時間は子供にも分かり易く記載され、少年はポスターを張りながらその情報を読み取った。  少年は、少し離れた位置からポスターを眺め、曲がっていないことを確認してから下駄箱に向かう。下駄箱には履き古した靴が有り、少年は上履きからそれに履き替えて校舎を出た。  その後、少年は幾らかの遠回りをして、教会の在る位置を確かめに行った。少年は、教会に近付くまではしなかったが、暫くの間外観を観察してから家路についた。
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