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命を救う為の場所で
緊急搬送された後、少年には適切な治療が施された。彼の痩せ衰えた体には、点滴によって回復に必要となる栄養が与えられる。また、夏の陽光で熱された道路に倒れたせいで出来た火傷は、洗浄後炎症を抑える薬が処方され、清潔な布によって保護されている。
搬送された後、少年は空調の効いた病室で何時間も眠り続けた。その位、彼の体は限界だった。そして、日が暮れた後で目覚めた少年は、目慣れない光景にパニックになる。
彼は、見慣れぬ場所に怯えながらも上体を起こした。その華奢な腕には点滴の針が刺さったままで、それに気付くなり少年は上方から吊された点滴を見上げる。
「え……まさか、なんで」
少年は、困惑しながらも病室を見回した。そこには、他の入院患者も居たが、彼等が少年の状態を説明出来ることは無かった。しかし、食事の出来る患者に夕食が運び込まれる時間帯であった為か、巡回の多い病院であった為か、少年の元には看護師がやって来る。
その看護師は、小学生にも分かり易いように、これまで起きたことを説明した。また、彼が寝ている間に、担任が入院生活に必要なものを用意していったことまでも伝えた。
担任が用意していった着替えや歯磨きセットなどの置かれた場所も、看護師が優しく少年に伝えた。看護師は、少年の置かれた境遇を察しながらも、必要以上に深入りをすることはない。
ベッド上で一通りの説明を受けた少年は、看護師に礼を言った。すると、他の仕事も抱えている看護師は、微笑みながら少年の元を去る。
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