天の国は誰の為にあるのか

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「初めて見る顔だね。さて、特別にお菓子をプレゼントしよう」  不思議な雰囲気を纏う神父は、メロン型のチョコを少年に手渡した。少年は、掌に乗せられたチョコを見た後で、訝しそうに神父の顔を見上げる。 「この場所へ来たとは言っても、流石に見知らぬ者から与えられた食べ物は警戒しますか。まあ、良いです。それを食べている間だけでも話を聞いて貰うつもりでしたが、そのまま話を聞いてください」  神父を無視して、少年は他の子供達が向かった方向へ向かおうとした。しかし、神父の方が上手だった。何が何でも、少年の行く先に回り込んで妨害をする。 「そのチョコ、メロンの形に似せて作られていますね。メロンでなくとも構いませんが、メロンの種が食べるのに邪魔だからと捨てるより、その種を植えて育てればまた美味しいメロンを食べることが出来る。種を蒔かねば、収穫もない。行動を起こさねば、利は得られない。君は、怯え警戒をしながらもここに来た……その行動を起こしたのは、人生を生きる上でとても重要なことです」  そこまで伝えたところで、神父は少年の進路から引いた。 「今日のメニューは、カレーライスとサラダと聞いています」  神父は、食事が用意された部屋に繋がるドアを右手で指し示した。一方、少年は警戒を緩めないまま、子供食堂の会場へ向かう。
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