天の国は誰の為にあるのか

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 会場では、既に他の子供達が食事を初めていた。用意されたカレーは十分な量があり、少年の来訪に気付いたボランティアは、彼に食べたい量を問う。  少年と言えば、他の子供達が食べている様子を横目で眺め、それから遠慮することなく欲しい量を伝えた。すると、カレー皿には白米がたっぷりと盛られ、その横に温かなカレーが注がれた。また、サラダは既に小皿に分けられており、ボランティアは手際良くトレーにカレー皿とサラダ皿を乗せて少年に渡した。 「席は空いているところを好きに使ってね。飲み物は、麦茶を用意してあるから、飲める分だけ取ってね」  少年はお礼を言ってトレーを受け取り、他の子供達と距離を開けつつカレーを食べ始めた。カレーには、野菜だけでなく肉も使われ、給食では味わえない豪華さに少年は目を見開いた。その後、少年は飲み込む様にカレーライスを食べ終えた。そうしてから、彼は手を付けていないサラダに目を向ける。  サラダには、葉野菜やキュウリ、ミニトマトなどが使われていた。しかし、ドレッシングの類は掛けられておらず、切り分けて盛られただけの状態に見える。  少年は、どこか渋々と言った様子で食べ始めるが、一口口に入れた後からは口に運ぶのは速かった。そうして、少年は食事を終え、しっかりと後片付けをしてから会場を去った。 「次は、本物のメロンを用意しておこう。その為の寄付なら潤沢にある」  去り際に神父が語ったことを、少年は聞いていないふりをして教会を去った。教会を去る少年の表情は、満腹のせいか教会へ来る前のそれより明るかった。
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