天の国は誰の為にあるのか

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 給食以外で腹を満たす幸せを知った少年は、次に子供食堂が開かれた時にも教会へ向かった。そして、そこには以前にも見掛けた子供達がやって来ており、教会内には笑顔を崩さない神父の姿が在る。 「今日のメニューは、ハンバーグにポテトサラダです。食後、私の話を聞いた者には、お楽しみも有ります」  殆どの子供は、メニューを語る神父をスルーして子供食堂の会場へ向かった。ただ一人の少年を除いて、神父の声はベルや楽器の音と同様に、ただの音として処理された。  子供達が美味しそうに食事を摂る中で、神父は意図の分からない視線を子供達に送っていた。中には、それを避ける様に予め見られにくい席に陣取る子供も居る。食べ終えたら直ぐに帰る子供も居れば、片付けを済ませてから帰る子供も居た。  そんな中、食べ終えても席を立たない子供も居り、新たに子供が来なくなる時分を見計らって神父は話し出した。 「そろそろですかね」  神父が声を上げた時、そちらに顔を向ける子供も居た。しかし、大半の子供は怠そうに椅子に座っているだけで、中にはゲーム画面から目を離さない子供も居る。
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