天の国は誰の為にあるのか

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「もの凄く昔の話。とある雇用者が、三人のしもべ達それぞれに資金を渡して旅に出た。それは全く平等な資金では無かった。そう、渡される物が不平等なのは、現代の子供も変わりませんね」  神父の表情は変わらなかったが、話を良く聞いた子供程、不快そうな表情になる。 「話の続きはこうです。多く資金を渡された二人のしもべは、その資金を増やしてみせた。一方、少ない資金を渡されたしもべは、増やす努力を一切しなかった。結果、そのしもべは、雇用者から叱責を受けることになる」  ここで、神父は子供たちを見てにこやかに笑う。 「つまり、例えそれが不平等であろうと、渡された物を有効活用しない者は、愚者だと言う教えですね」  そう言ってから、神父は半分に切られたメロンを、ゲーム画面から目を放さなかった子供達の前に置いた。 「聞こえる耳を持ちながら、それを活用しない者にはこれを」  何も渡されなかった子供達は、不思議そうにテーブルに置かれたメロンを眺めている。 「そして、聞く素振りを見せるまではした者には、これに一種類のアイスを乗せて」  ニコニコしながら、神父は半分に切られたメロンに手際良くアイスを乗せていった。そして、ゲームをしていなかった子供達に、それを一つ一つ配って回る。 「最後に、私の話から得るべき物を見極めようとしていた者には、アイスは三種類のトリプルです」  神父は楽しそうにメロンをデコレーションし、それを一人の少年の前に置いた。 「さあ、遠慮することなく食べて下さい」  と、神父は言うが、最初に配られた子供達は既に食べ終えていた。そして、その子供達は、神父に礼を言うこともなく直ぐに帰った。  最終的に、一番豪華なデザートを受け止めた少年が残り、神父は余ったメロンにアイスをどっさり乗せて食べていた。
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