知識は生きる為の道の選択肢を増やす

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知識は生きる為の道の選択肢を増やす

 少年が子供食堂へ行くのにも慣れた頃、教会で開かれる無料学習塾のポスターを発見する。そのポスターには、ボランティアによる講義が開催されることが表記されていた。少年は、その直近の日時を記憶し、それから開催場所を確認した。  少年は、無料学習塾の開催場所を眺めてから帰宅し、そこでは何が行われるのかを考えながら開催日を待った。  無料学習塾には、ボランティアに宿題等を見て貰える部屋と、ボランティアによるオリジナルの授業が行われる部屋に分かれていた。前者の塾に年齢の指定は無かったが、後者の塾は小学生を対象とした部屋になっている。また、それぞれの部屋には人数制限があり、席が埋まってしまえば新たな子供は受け入れることは出来なかった。  何も持たずにやって来た少年と言えば、ボランティアが授業を行う部屋へ入った。そこには、既に数人の子供が席に着いており、少年の後からも何人かの子供が部屋に入った。そして、ついに、授業が始まる時間になる。 「それなりに集まってるな」  背の高いボランティア講師は、部屋に集まった子供達をざっと眺めた。その中には、講師の背の高さに驚いた様子を見せる者も居れば、持参したゲーム機から目を話さない子供も居る。 「そこのガキ。授業を受ける気が無いなら出て行け」  ゲームをするのに夢中な子供の耳には、ボランティア講師の声が届かない。この為、講師はその子供の前に歩んでいく。 「ゲームで遊びたいなら余所でやれ。席にも限りが有る。ここに来て良いのは、話をちゃんと聴く奴だけだ」  それでも、ゲーム機を手放さない子供に対し、講師は声を低くして言う。
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