魔の対立論争

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流石の魔族たちも勇者の馬鹿にするような言葉を無視することはできなかった。 「お、おい。 勇者ごときが我々内輪の事情に口を挟むな!!」 そう言うも勇者の話は止まらない。 「いつもどうやって意見をまとめてんの? 一番偉い魔王様にも意見を聞いてみた?」 「魔王様は常にお忙し」 「今ここに勇者様がいるんだぜ? どんなに忙しくてもこっちの方が一大事でしょ。 もちろん俺は魔王城に攻め込むつもりはないけど、別の勇者だったら分かんないよ?」 「「「・・・」」」 「寧ろ俺はかなりのレアケースだと思っていい。 正面からやってきて仲間に入れてくれだなんて出血大サービスだろ?」 勇者は辺りをキョロキョロと見渡し始めた。 「ねぇ魔王様ー! どこかで見ているんだろー?」 「魔王様に何をッ!」 『・・・何の用だ?』 「「「魔王様!?」」」 姿を見せずこちらからは全く様子が分からないが、こちらの様子は見ているようだった。 「その声は本当の魔王様?」 『・・・そうだが』 「俺は勇者だ。 魔王様が決めてよ。 俺を魔族に入れるのかどうか。 魔王様が決定したら誰も反対しないでしょ?」 そう言うと魔王は悩むことなく意見を口にした。 『そうだな。 やはり人間は信用ならないから今すぐに追い出』 「魔王様、お考え直しください!! こちらへ勇者を留めておいた方が我々には有利なのですよ!? 人質にもできますし!!」 『う、うむ、確かにそうだな・・・』 兵士が口を出したことにより勇者も慌てて口を挟む。 「おい待て! 今俺は魔王様に」 「ですが魔王様! 勇者がかなりの実力の持ち主だと裏切られた時に我々が負けてしまいます!!」 『そ、それもそうだな・・・』 それらのやり取りを聞いて勇者は溜め息をついた。 「兵士も兵士だけど魔王様も魔王様だな」 「何!?」 「魔王様もいつもこんなんなのか?」 「魔王様を侮辱する者はやはり魔族には!!」 「分かった分かった、もういい。 誰も決定権を握る者はいないということだな」 「元はと言えばこういう大変な時に勇者が現れるのがいけない」 「俺のせいにするなって。 よく考えてみろよ? とりあえず俺を魔族に入れるかどうかはいいとして、折角だから俺を捕まえておいたら?」 「・・・捕えるだと?」 「さっき言っていたじゃないか、勇者をここへ留めておいた方が有利だって。 俺を信用してくれたら俺を解放して魔族に入れてくれよ。 それまでは大人しく牢屋とかにでも入っておくからさ。  もっともあまりにも待遇が悪かったら、大人しく捕まってはいられないかもしれないっていうことだけは言っておくけどな」 そこでまた議論が始まるのだ。 「勇者の言葉を信じていいと思うか?」 「絶対に罠だ。 勇者の提案は何があっても否定するべきだ」 「だがそんなことをして勇者に何のメリットがある?」 とてもまとまる様子のない魔王軍を見て勇者はついに業を煮やしてしまう。 「あぁもう、うるさぁぁぁぁぁいッ!! そんなに議論したいならずっとしていればいいよ!!」 勇者は耳を塞いで大声でそう言った。 そしてアシュリーを見据える。 「よし、えっと君! 積極的に議論に参加していないようだし、折角だから魔界を案内してくれよ」 「え、俺・・・?」 「それに見たところ一番今の状況に不満を抱いているように思えた。 正直、こんな状態に辟易しているんじゃないのか?」 「まぁ・・・」 「おい、アシュリー!! 勇者の言葉を信じるんじゃ・・・」 そのような言葉に勇者は人睨みし黙らせてしまう。 「で、どうよ?」 「まぁ、案内くらいなら・・・」 「おぉ! サンキュッ!!」 そんなこんなでアシュリーは勇者を案内することになったのだ。 ―――・・・変わった勇者だな。
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