龍神は愛する者のために命を賭す(改稿版)

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 ある時、私は二人にキオのことを尋ねた。  二人は様々なことを私に教えてくれていたが、頑なに村のことには触れなかった。何度も言葉を濁されて、話題を変えられた。  けれど、私は根性がある方だ。何度も何度も同じ質問を繰り返した。根負けした二人は「龍神様には内緒ですよ」と人差し指を立てて教えてくれた。  私が生贄として差し出された日、村には龍神が現れた間しか雨が降らなかったらしい。もちろんそれは村にとって十分な量ではなかったけれど、キオは私が教えた方法で水を得て、うまく凌いでいるという。  もう少しすれば雨の多い時期になるだろうと桜は付け加えた。  話を聞いて、私は龍神が口止めをした理由を理解した。知れば私が心を痛めると思ったのだろう。彼女達が言うように龍神はとてもやさしかった。  自分たちの主は素晴らしいだろうと胸を張る二人が愛おしい。相変わらず手厳しい言葉を貰う時もあるけれど、二人は結果的に龍神のためになることであれば協力を惜しまない。  私達はいい関係を築けていた。 「ねえ、神力って鍛えることは可能なの?」  またある時、私はそう尋ねた。 「結構な心掛けですが、以前お話しした通り神力は神の意志で高められるものではありません。それを受け止める器も、神として顕現した時に定まっているものと聞いております」 「私の器は?」  重ねて問いかけると、二人は困ったような顔をして押し黙った。 「やっぱり元人間だから小さいのかな」  立ちはだかる問題が困難であるなら努力で解決したかった。けれど、解決方法自体が存在しないのなら、さすがにちょっと落ち込んでしまう……。 「私達には器の大きさを測ることはできないのです」 「ただ、みのり様がまだまだ空っぽに近いことはわかります」 「ですが、それはみのり様が神となられてまだ日が浅いからであって」  桜は申し訳なさそうに目を伏せ、橘は両手を広げて力強く説いた。  私を元気づけようと二人があたふたしている姿は、初めて見たかもしれない。 「焦ったって仕方ないよね。ありがとう。二人とも」  絶対に、誰かを傷つけるような方法で信仰を集めたりはしない。二人の笑顔に、心の中で強く誓った。
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