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その日。
卓治はさっそく、美咲を転校先の高ノ山台小学校に連れていった。
校長に事情を説明すると、話しは聞いておりましたと言われ、手続きをとった。
「校内を見て周りますか?」
というので、校長の説明を聞きながら、校舎から校庭を見て周った。
土曜日で学校自体は休みなので、教室には生徒の姿は見られ無かったが、校庭では、色んな部活が行われており、にぎやかであった。
「ウチはスポーツ部も充実してましてね」
校庭の隅を歩きながら校長は自慢げに言った。
「そうですかー」
卓治は相槌を打ったアト、美咲に向かって
「なんかスポーツやってたのか?」
と聞いた。
「ううん。なーんもやってへん」
彼女は大して興味もないらしく、首を振った。
日曜日には美咲の荷物が届いた。
1日、2人で買い物に出かけ、その日の夕食は彼女が作ってくれた。
「家居る時も、1人が多かったから、ボチボチ作っとってん」
そう言いながら、冷蔵庫を物色していた。
「野菜、いっぱい買ったからな、野菜炒めしよか。アトは…あるもんでなんか作るわ。
エエやろ?」
「うん、まかすよ」
と卓治が言うと美咲は台所に立った。
こちらに背を向けて作業している彼女を眺めながら、これからどうしたら良いのかと言う不安は続いていた。
(結構、しっかりしてそうなんで、日中、オレが居なくても大丈夫そうだが…)
出来上がった野菜炒めと、カニカマときゅうりとタコの酢の物を2人で食べた。
なかなか旨い。
「いけるな、コレ」
と言うと
「そやろ?案外エエ感じやろ?店だしたら金とれるやろ、これ」
と美咲は嬉しそうに、はにかんだ。
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