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タカコはその先に目をやり、眉をしかめ、コソコソ声で
「彼は…三山翔っていう子で…」
と、ためらいがちに
「なんか、尖ってて、ケンカっぱやい男子なの…」
「なるほど。ワルなんや」
美咲は翔から目を離さずに声をひそめた。
「ううん。そこまでワルではないと思う。
でもちょっかい出し好きて、他クラスの生徒とは揉めるコトもあるそうよ」
「ふーん」
美咲は大きく頷いた。
「あっ、もしかして…さっき転んだの、彼に足を引っ掛けられたとか?」
とタカコ気付く。
「へ〜、よー判かったなぁ。その通りや」
美咲は目を丸くした。
「で?そーゆーヤツは1人なん?」
「ウチのクラスはそうね。でも、彼の隣にいる黒井源君と、その前の席の初芝裕太郎君、この3人、よくツルんでるよ。仲が良い」
「なるほど〜、3人ねぇ〜」
美咲は意味深に頷き
(ドコ行っても、そーゆーヤツはおんねんな)
と、鼻で笑った時、1時間目のチャイムが鳴った。
「それでは授業始めまーす」
南先生が叫んだ。
「美咲さん、国語の教科書、大丈夫?」
南は少し、背伸びをして後ろの席を見た。
「ハイ、あります」
美咲は大きな声で答えた。
1時間目の終わりのチャイムが鳴ると、10分の休み時間に入り、先生が教室から出て行くと同時に、数人の生徒達が美咲の席を囲んだ。
「ねえ、大阪って、やっぱりここより都会?」
入江ユリナが聞いた。
「市内行ったら賑やかで人多いけど、ウチ住んでたトコはそんなん都会ちゃうで。
チバのこの辺とドッコイドッコイやわ」
「街歩いてると、芸能人とか会ったりするの?」
大西カエの質問である。
「どうなんやろ。1度ミナミで『とっちゃんかっちゃん』の2人が買い物してたの遭遇したけど、それくらいちゃうか?」
「えー!なにそれー!とっちゃんかっちゃんて知らない」
少し笑いが起きた。
関西芸人で知名度は低いらしい。
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