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翔は今度前方に倒れた。
そこに美咲が乗っかり、マウントポジションの体勢に持ち込むと、上から見下ろしながら
「謝れ」
と叫んだ。
「うるせー、オマエこそ謝れ」
と、乗っかられているが、譲らない翔に美咲はまた、平手をかました。
「いったー」
翔、うごめく。
が、美咲は平手打ちを連打。
源と裕太郎は
「あわわわわ!」
と口に手を当て、オドオドし、どうしてよいか判らない風であったが、翔が叩かれながら
「オ、オマエらコイツなんとかしろ」
と叫ぶと
「う、うん」
と、2人は美咲の腕を引っ張り、翔から離した。
「オマエらもやられたいんかい」
美咲、今度は源と裕太郎を目を細め睨む。
2人は顔をブルブル左右に振ったその間に、翔は立ち上がり
「このヤロー」
と、美咲と取っ組み合いのケンカになろうとしたその時
「コラー」
男性の怒鳴り声が響いた。
組み合っていた2人が声の方を向く。
そこに突っ立っていたのは、5年1組担任、
額が広くて唇のデカイ、
古家道雄先生(51歳)であった。
「オマエら何やってんだ。」
広い額にシワを寄せ、近付いて来た。
そして翔をみると
「また、オマエか」
と、呆れるように呟いたアト、美咲に目をやり
「君は?今日転校して来た……」
「御陵美咲です」
翔を突き放すと、彼女は軽く会釈をした。
「どうしたんだね、一体」
唇星人古家は、翔と美咲に訊ねた。
「あ、全然なんでもないです」
美咲は手を振ったが、翔は「チッ」と、ソッポを向いた。
「なんにもない訳ないだろう。2人で小競り合いしてたじゃないか」
猜疑心の表情の古家。
「そうじゃなく、彼とは仲良くなって…えーっと…私の得意のプロレス技を教えていたんです」
すぐウソとわかる美咲の苦しい言い訳に
「そうは見え無かったな。ま、とにかく、2人、職員室に来なさい」
やはり信じていない古家は2人の背中を押した。
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