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それは多少ながら心配はあった。
なので
「カナガワの実家に帰るのかい」
と聞いたが彼女は
「ううん」
と首を振り
「取り敢えずは、トーキョーに住んでいる妹のトコに行こうかと思ってる」
と答えた。
桐子の3つ違いの妹は、夫と子供2人で暮らしているが、多分ソコには行かないだろうなと卓治は思った。
男。そう、彼氏の元へ駆け込むのだろう。
別に証拠を握っている訳ではない。
外出が多くなったことと、妻のほんの少しの美への変化が、それを感じさせていた。
だが卓治はイヤな気分になる訳でも無く、追求することもせず、知らぬふりをしていた。
(それならそれで良い)
男と一緒になるなら、もう、自分に連絡してくることはないだろう。
ただ、あんまりゴタゴタしたことに巻き込まれたく無いと思った。
離婚後の卓治の生活に、なんら変化は無かった。
平日は残業し、帰宅途中のコンビニで弁当買うか、家で飯を炊き、ちょちょいと何か作って済ませた。
それはもう、大分前、何年前からだったか、お互い、自分の食い物は自分で調達するような生活になっていたので、そこは問題無かった。
卓治は妻が出て行った翌週、勤め先の総務課に、このことを告げた。
扶養あつかいでは無かったが、義務なので会社に報告した。
卓治の離婚は少しずつ社内に知れ渡って行った。
親しい同僚からは
「お互いそれが良いと判断し、後悔も後腐れも無く、誰にも迷惑をかけない離婚って、そーゆーのも有りだよね」
などと言われたりもしたが、周りは、詳しい内容を聞きたいのだが、話しを持って行きずらい雰囲気っていうのが漂っていた。
同じ営業課の北山雪子もその1人であった。
実は雪子は卓治に好意を寄せていた。
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