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が、当の主役が居ない上に、2人とも美咲の体調のコトが気になって、トークは続いてないようである。 「なんか、お腹、冷しちゃったんでしょうか」 先生、チラチラ、扉の方に目をやる。 (ヤバ、コッチ見よる) 美咲は顔を引っ込めた。 卓治も立ち上がり、コッチに歩いて来た為 (アカン!) 美咲は急いでトイレへ入った。 「オイ、大丈夫か?まだ痛いの?」 卓治は、トイレの中で、座らず突っ立っている美咲に声をかけた。 「うーん、まだ出られへん」 と美咲が言うと、先生もソコに居るみたいで 「薬、飲んどいたほうがイイわよ」 と言う声が聞こえた。 「薬は飲まなくても治ります」 2人っきりにする為に痛がってるマネをしているので、薬など要らない。 「治るって…何かの病気かもしれないし…」 「そうよね…酷くなったら大変…腸炎とか流行ってるって言うし…」 2人の暗く心配そうな声。 それを聞いた美咲は、この展開はマズいと思った。 変に大事になって、病院に連れて行くとかなっても困る。 仕方無しにトイレから出た美咲は 「もう大丈夫です。スッキリ完璧に治りました」 とケロっと言った。 「スッキリ完璧って…またなるかもしれないから腹痛の薬、一応飲んどくか」 卓治が探しに行こうとしたが 「イヤイヤ。ホンマに落ち着いたみたいや。もう全然イタない」 と、慌てて止めた。 先生は 「それならイイけど…」 と、今だに気がかりで心配そうな表情を見せていた。 そして、ここが潮時と思ったのか 「それでは私、これで失礼しますので」 と、会釈をした。 (え!帰んのかーい) せっかく気を使って、2人っきりをセッティングした努力も報われず、残念と、ガクっと肩を落とす美咲であった。 卓治は 「そうですか」 と返事し、一旦リビングへ戻り、先生は持って来たバッグとファイルを抱えると 「お腹、温かくしておいた方がイイわよ」 と美咲に言い、卓治に 「卓治さん、もし、また彼女が痛がるようなことがあったら、遠慮なく連絡下さい。 それではお邪魔しました」 と帰って行った。
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