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「1ヶ月ほど前、嫁の敦子さんがアパート出ていかはって、悟ちゃんと美咲、2人になってんけど、その悟ちゃんからな 『美咲を頼むわー』言うて電話があったんよー。 それで大阪は堺の悟ちゃんのアパート行ったら、美咲しかおらへん。 おとーちゃんどないしたん聞いたらな、一昨日の朝、出てったままや言うやんかー。 もう私、ビックリしてな、美咲、ウチ連れて帰ってん」 「そうだったんですか…娘1人置きっぱなしで出て行ったんですか」 「そーやねん。酷い話しやろ」 全く酷い親である。 卓治は幼かった美咲の顔を思い出した。 元気で活発で人見知りしない明るい、よく喋る女の子だった。 「じゃ叔母さんが引き取って?」 里子の家族と御陵家族は、大阪京都というのもあって、少なからず付き合いはあったみたいであるが 「そうはしたいんやけどな…」 悠長に喋っていた里子は歯切れが悪くなった。 「実はな、ウチも大変なんや。 卓ちゃんも知ってると思うけど、あの狭い団地に、私のオカンとダンナと子供3人居てるやろ? それでもう1人増えるって……ちょっとなぁ」 「そーですよね。キツイですよね」 卓治も頷いた。 「せやかて施設入れるー? それも可哀想やんかー」 「確かに」 「でな…申し訳ないんやけど…美咲、卓ちゃん預かってくれへん?」 「そうですか…」 卓治は頷き、そう返事したアト 「え?」 甲高い大声を出し、顔を上げた。 「オ、オレ?」 「そうや」 「なんで?」 卓治は目を丸くして里子に詰め寄った。 「さすがに桐子さんおったら、私かて、こんなん、相談しにけーへんよ。 せやけど卓ちゃん1人になったー聞いてな。 どないやろなー思て来てん」
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