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「イヤイヤ、1人だからって、オレも困るんだけど」
里子はとんでもないことを言い出した。
この為にワザワザ京都から訪ねて来たのである。
「頼むわ卓ちゃん」
里子は申し訳無さそうに手を合わせた。
卓治の妻、桐子と卓治の親戚連中とは、あまりウマがあわず、桐子の方が、ちょっと避け気味だったのは里子も感じていただろう。
しかし
逆に卓治は気さくな人柄なので頼みやすく、1人になったのを聞いて話しを持ってきたのだ。
「でも今は里子叔母さん家で上手く暮らしている訳でしょ」
「それが上手くいってないねん…
そやから頼んでんねん。
ウチの子も小学中学やけど、ウマが合わんらしくて、ケンカばっかりしよるし、美咲、2度家出して、ケーサツ連絡して捜して貰ったりしてな、大変やってん」
そんな子を自分に押し付けるのかと、卓治は口をあんぐり開け、呆れた。
「美咲の両親とは連絡とれないの?」
「うん。ケータイに電話してもでーへんし、ドコ行ったかも判らへん。
私のカンやけど、2人とも浮気しとったんちゃうかなーって。
それで相手の元へ走ってった。
美咲は邪魔になるんで置いて行ったんちゃうかなーって思てんねん。多分、多分やで、知らへんけどな」
「ありうるね」
子供を置いて行くくらいだ。
その可能性は大きい、と言うか、その理由しかない。
「両親は実家には戻ってないんだって?」
浮気なら戻るはずはなかろうが、卓治は一応聞いた。
「悟ちゃんの方は両親亡くなって実家も無いし、敦子さんトコは年老いた母親が1人で住んではるんやけど、連絡は無いゆーてはったわ」
「それなら、美咲はその敦子さんの親に預けたら?
祖母なんだし」
「アカンアカン。1人で生活するのもやっとらしいし、腰痛やらなんやで、美咲の面倒見れる状態や無いらしい」
「でもオレだって急にそんなコト言われても困るよ。
そんなに御陵さんトコと付き合いがあった訳でもないし」
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