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「イ、イヤ、ちょっと、叔母さん」 卓治も急いでアトに付いて玄関に出たが里子は 「ゴメンやで。もう飛行機の時間、無いねん」 と言葉だけで、振り返ることも無く、タクシーに乗り込むと去って行った。 それを見送りながら 「参ったなぁ」 ウチの学区内の小学校までもリサーチして、もう手を打っていたとは。 なんて用意周到な叔母なんだよ。 と後頭部をコリコリかいていると 「申し訳無いなぁー、卓ちゃん。 ホンマにゴメンやで」 女の子はもう1度頭を下げた。 「イイよイイよ。中へ入ろ」 卓治は、ひきつけ笑いで美咲の肩に手を添えた。 リビングで2人、向かい合って腰掛けた。 さて、これからどうしたらイイのだろうか。 頭がまだ現状に追いついて行って無かった。 卓治はあまりこの子に両親のことについては聞かない方がイイなと思ったが、どう話して良いか、入り口を探していると 「ウチ、卓ちゃんのコト、うっすら覚えてるよ」 美咲は軽い笑顔で言った。 「そうなんだ。美咲ちゃん、幼稚園くらいだったと思うけど」 「多分、そやろな。その頃は、オトンとオカンと一緒に、色んなトコ行っててんけどなぁ。 公園とか遊園地とか、映画も見に連れてって貰ってたし。 そやけど、何年くらい前やろ……どっちも家居ることが、少なくなって来て、あんまり喋らんようになった思ってたら、よー喧嘩するようになってな。 これ、ウチ、アカンのちゃうんとは、なんとなく思ててん。 そしたら最初、オカン出て行ってもーて、なーんも言わんとやで。 その後、オトンも、シレーっと居なくなるし。 流石のウチも、どないしたらエエねんて、病んだわ。 なんぼ言うたかて、小学5年の女の子やで。おっかしいやろ。幼い子を置き去りにして、姿、くらますなんて。 どーゆー親やねん、て。 小学生1人では生きていかれへんやろって思ってたら、里子おばさん来てくれてん」
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